瓦屋根工事の流れ|葺き替え・葺き直し・棟取り直しの全工程を初心者向けに解説
瓦屋根の工事には葺き替え・葺き直し・棟取り直し・部分補修の4種類があり、屋根の状態と築年数によって最適な工法が異なります。葺き替え工事の工期は約7〜10日、葺き直しは約5〜7日、棟取り直しは約2〜5日が目安です。本記事では各工事の流れを工程ごとにわかりやすく解説し、工期・費用相場・業者選びのポイントまで網羅しています。
1. 瓦屋根とは|基礎知識と種類
瓦屋根とは、粘土を成形・焼成した「粘土瓦」やセメントを成形した「セメント瓦」を屋根材として使用する屋根のことです。日本の伝統的な屋根材として古くから使われており、耐久性・耐候性・遮音性に優れている点が特徴です。
瓦は1枚ずつ独立して屋根に固定されているため、一部が破損しても部分的な交換が可能であり、メンテナンス性の高い屋根材として知られています。また、瓦自体に塗装が不要な点もメリットの一つです。
表面に釉薬(うわぐすり)を施し焼成した瓦。ガラス質の被膜により水を吸わず、退色しにくいのが特徴です。
焼成の最後にいぶして表面に炭素被膜をつけた瓦。独特の銀色がかった風合いで、和風建築や寺社でよく見られます。
セメントを主原料にした瓦。表面の塗膜が劣化するため、定期的な塗装メンテナンスが必要です。
瓦同士をかみ合わせて固定する構造を持つ現代の標準瓦。地震や強風に対して高い耐性を発揮します。
瓦本体は長寿命ですが、瓦の下にある防水シート(ルーフィング)の寿命は約20〜30年です。また、棟部分の漆喰は10〜20年で劣化するため、瓦本体が健全でも下地や棟部分のメンテナンスは必要となります。
2. 瓦屋根工事の4つの種類と選び方
瓦屋根の工事は、屋根の状態と築年数によって、おおまかに4種類の方法から選択します。それぞれの特徴を理解し、現在の屋根の状態に合った工法を選びましょう。
葺き替え工事
既存の瓦・ルーフィング・桟木をすべて撤去し、新しい屋根材で葺き直す工法。瓦・下地ともに新しくなります。
葺き直し工事
既存の瓦をいったん取り外し、下地材を新調してから同じ瓦を再び葺く工法。瓦が健全な場合に選択します。
棟取り直し工事
屋根の頂点にある「棟瓦」を一度取り外し、漆喰や葺き土を新しくしてから積み直す工法。雨漏り予防に有効です。
部分補修・漆喰補修
破損した瓦の差し替えや、棟部分の漆喰のみを補修する工法。被害箇所が限定的な場合に選択します。
3. 葺き替え工事の流れ(全11工程)
葺き替え工事は、屋根全体を新しく作り直す大規模なリフォームです。一般的な戸建住宅で工期は約7〜10日、天候や屋根面積によってさらに延びることがあります。ここでは標準的な11の工程を順番に解説します。
現地調査・点検
屋根に上って瓦の割れ・ずれ・欠け、棟部分の漆喰の劣化、防水シートの状態などを点検します。瓦をめくって下地の状態を確認することもあり、必要に応じてドローンや高所カメラも使用します。所要時間は1〜2時間程度です。
お見積もり・ご契約
点検結果をもとに、必要な工事内容・使用材料・工期・費用を明記した見積書が提示されます。葺き替えは費用が大きい工事のため、複数社から相見積もりを取り、内容を比較検討することをおすすめします。
近隣挨拶・足場設置
工事開始の1〜3日前を目安に、近隣のお宅へご挨拶に伺います。続いて建物の周囲に足場を組み立て、瓦や廃材の落下防止のためメッシュシートを張ります。足場設置は半日〜1日が目安です。
既存瓦の撤去
棟瓦から順に取り外し、その後、平瓦を1枚ずつ手作業で撤去します。瓦は1枚あたり約3kg、屋根全体で数千枚に及ぶため非常に重く、撤去には体力と熟練を要します。撤去した瓦はトラックに積み込み、産業廃棄物として処分します。
葺き土・ルーフィング・桟木の撤去
瓦を固定していた葺き土(土葺き工法の場合)や、防水シート(ルーフィング)、瓦を引っ掛ける桟木(さんぎ)を撤去します。古い土葺き工法の場合は、土の量が非常に多く、重労働となります。
野地板の点検・補修
屋根の下地となる野地板(のじいた)を点検します。雨漏りで腐食している箇所は新しい野地板に交換し、必要に応じて構造用合板を全面的に増し張りすることで強度を確保します。下地の状態が屋根全体の寿命を左右します。
新規ルーフィング敷設
屋根全体を覆う防水シート(ルーフィング)を敷きます。改質アスファルトルーフィングなど耐久性の高い製品を使うことで、雨水の浸入を長期的に防ぎます。ルーフィングは屋根の防水性能を決める非常に重要な層です。
桟木の設置
瓦を引っ掛けるための桟木(横材)を、屋根面に水平に取り付けます。瓦の規格に合わせて等間隔に配置し、釘やビスで野地板へ固定します。桟木が正確に並ぶことで、仕上がった屋根面が美しく整います。
新規瓦の設置
桟木に瓦を引っ掛けながら、屋根面の下から上に向かって1枚ずつ施工していきます。現在は地震・台風に強い「ガイドライン工法」が標準で、すべての瓦をビスや釘で固定するのが一般的です。防災瓦の場合はかみ合わせ構造により、さらに高い耐風性を発揮します。
棟の施工(棟瓦・漆喰)
屋根の頂点である棟部分を仕上げます。棟金具と垂木を設置し、その上にのし瓦・冠瓦を積み上げ、銅線やビスで固定します。棟は屋根の中でも雨漏りリスクが高い部分のため、丁寧な施工が求められます。
完了検査・足場解体・お引き渡し
施工不良がないかを職人と現場監督が点検し、お客様にも立ち会い確認をお願いします。問題なければ足場を解体し、建物周辺を清掃して、保証書や施工写真をお渡しして完了となります。
まずはお気軽にご相談ください
屋根・外壁のプロが無料でお答えします。
お見積り、リフォームの疑問など、どんなことでもOK!
4. 葺き直し工事の流れ
葺き直し工事は、既存の瓦をいったん取り外し、下地材を新しくしてから「同じ瓦」を再び葺き直す工法です。瓦本体は健全だが、その下の防水シートや桟木が劣化している場合に選択されます。瓦の購入費用が不要なため、葺き替えより費用を抑えられます。
- 現地調査・お見積もり
- 近隣挨拶・足場設置
- 既存瓦の慎重な取り外し(後で再利用するため)
- 葺き土・ルーフィング・桟木の撤去
- 野地板の点検・必要に応じた補修
- 新規ルーフィングの敷設
- 桟木の設置
- 取り外した瓦を再び葺く
- 棟の施工
- 完了検査・足場解体・お引き渡し
工期は約5〜7日が目安です。瓦を一度外して並べておく必要があるため、屋根の上か近隣の空きスペースを使用します。葺き直しは「瓦の価値を活かしながら防水性能を回復させる」費用対効果の高い工法といえます。
5. 棟取り直し工事の流れ
棟取り直し工事は、屋根の頂点にある「棟瓦」だけを一度取り外し、内部の漆喰や葺き土を新しくしてから再度積み直す工法です。棟部分は雨漏りリスクが特に高く、漆喰の劣化は雨水の侵入につながるため、定期的な棟取り直しが必要です。
- 現地調査・お見積もり
- 近隣挨拶・足場設置(または部分足場)
- 冠瓦・のし瓦の撤去
- 古い葺き土・漆喰の撤去
- 棟金具・垂木の設置(必要な場合)
- 南蛮漆喰の充填
- のし瓦・冠瓦の再設置
- 銅線・ビスでの固定
- 完了検査・足場解体
棟取り直しは「棟を一度全部ばらして組み直す」工事で、内部からしっかり補修できます。一方、漆喰補修は表面の漆喰のみを塗り直す工事で、内部の劣化が進んでいない場合の応急処置となります。築20年以上経過している場合は、棟取り直しを検討すべきタイミングです。
工期は約2〜5日が目安です。棟の長さや本数(大棟・隅棟)によって変動します。屋根全体の葺き替えより費用を大幅に抑えながら、雨漏りリスクを効果的に減らせるため、瓦屋根メンテナンスの定番工事といえます。
6. 部分補修・漆喰補修の流れ
瓦の一部が割れた、強風で数枚ずれた、棟の漆喰が剥がれてきた、といったケースでは、被害箇所のみを補修する部分工事が選択されます。費用が安く済むうえ、工期も短いのが特徴です。
割れた・欠けた瓦を1枚ずつ新しい瓦に交換します。同じ瓦の在庫がない場合は、近い形状・色の代替品を使用します。
棟部分の劣化した漆喰を撤去し、新しい漆喰を塗り直します。表面のひび割れや剥がれが見られる場合の補修方法です。
強風や地震でずれた瓦を元の位置に戻し、必要に応じて固定金具やビスで固定し直します。
7. 工期と費用の目安
工事種類ごとの工期・費用相場・推奨タイミングを比較表としてまとめました。費用は屋根面積・形状・既存屋根の状態・選定する瓦・地域などによって変動するため、あくまで一般的な目安としてご参照ください。
※上記は一般的な戸建住宅における目安です。屋根面積、瓦の種類、足場の難易度、廃材処分量によって金額は大きく変動します。正確な金額は現地調査後のお見積もりでご確認ください。
8. 工事中の注意点と事前準備
瓦屋根工事は屋根を一度開ける作業を伴うため、塗装工事と比べて影響が大きい場合があります。事前に把握しておくことで、トラブルを未然に防げます。
- 瓦の撤去・搬出時には大きな音が出ます。在宅勤務やオンライン会議は避けるか、別室で対応する必要があります。
- 瓦撤去中に屋根がブルーシートのみの状態となる時間帯があります。天気予報をしっかり確認したうえでの作業となるため、業者と工程を共有しておきましょう。
- 古い土葺き工法の家では、撤去した葺き土の量が多くなり、搬出のためのトラック駐車スペースが追加で必要になります。
- 瓦は重量物のため、車両の進入経路と荷捌きスペースの確保が事前に必要です。
- 屋根裏に住み着いた動物(ハクビシン・コウモリ等)がいないかは事前に確認し、必要なら専門業者の対応を先行させます。
- ペットがいるご家庭は、強い振動や音が屋根から伝わるため、一時的な預け先の検討をおすすめします。
- 古い住宅では、屋根重量が大幅に減ることで耐震性が向上するメリットもあります。葺き替えと併せて屋根材を軽量化する選択肢も相談してみましょう。
9. 失敗しない業者選びのポイント
瓦屋根工事は職人の技術力が仕上がりを大きく左右する専門工事です。業者選びは慎重に行いましょう。以下のポイントを必ず確認してください。
瓦工事士、かわらぶき技能士などの有資格者が在籍しているかを確認しましょう。
耐震・耐風基準を満たすガイドライン工法に対応した施工方法を提案してくれる業者を選びましょう。
自社施工の業者は中間マージンが発生せず、責任の所在も明確です。
「一式」表記が多い見積書は要注意。工程・材料ごとの内訳が明記されているかを確認します。
瓦は重量があり、処分費が高額になります。処分費が見積書に含まれているか確認しましょう。
工事保証とアフター点検の内容が書面で交付されることを確認しましょう。
瓦工事の施工事例を写真や所在地情報とともに具体的に提示できる業者を選びましょう。
「今日契約すれば割引」「無料点検」を口実に契約を迫る訪問販売には十分注意してください。
10. よくある質問
粘土瓦(釉薬瓦・いぶし瓦)は基本的に塗装の必要はありません。一方、セメント瓦・モニエル瓦は表面に塗膜があるため、定期的な塗装メンテナンスが必要です。お住まいの瓦の種類が分からない場合は、業者の点検で確認できます。
可能です。葺き替え時にガルバリウム鋼板などの軽量屋根材へ変更することで、屋根重量を大幅に減らし建物の耐震性を高められます。古い住宅で耐震性が気になる場合は、瓦から軽量屋根材への変更は有効な選択肢の一つです。
台風や強風、雹(ひょう)、雪災など自然災害が原因で瓦が破損した場合、火災保険の対象となる可能性があります。被害状況の写真と修理見積もりを揃え、契約している保険会社へ申請する必要があります。経年劣化が原因の場合は対象外です。
必ずしも葺き替えが必要とは限りません。雨漏りの原因が瓦のズレ・割れ・棟の漆喰劣化など局所的なものであれば部分補修で対応できる場合があります。一方、ルーフィングの寿命や野地板の腐食が広範囲に及んでいる場合は葺き替えが推奨されます。まずは原因調査が重要です。
瓦本体が健全であれば、葺き直し工事で再利用が可能です。粘土瓦は耐久性が高いため、ルーフィングの寿命を迎えても瓦自体はまだまだ使えるケースが多くあります。瓦の状態確認は、業者の点検で判断できます。
11. まとめ
瓦屋根の工事には、葺き替え・葺き直し・棟取り直し・部分補修の4種類があり、屋根の状態と築年数によって最適な工事方法が異なります。葺き替えは約7〜10日、葺き直しは約5〜7日、棟取り直しは約2〜5日が一般的な工期目安です。
瓦本体は長寿命ですが、その下のルーフィングや棟部分の漆喰には寿命があります。瓦が健全に見えても、定期的な点検で下地の状態を確認することが重要です。雨漏りが起きてから慌てるのではなく、計画的なメンテナンスでお住まいを長持ちさせましょう。
どの工事を選ぶ場合でも、まずは信頼できる業者による現地調査と診断を受けることが大切です。複数社から見積もりを取り、施工内容・使用材料・保証内容を比較したうえで、納得のいく契約を結びましょう。
おすすめ記事 台風シーズン到来前の屋根対策 & 被災後の最速リカバリーガイド 台風シーズン前に行うべき屋根点検や補強のポイントを解説。被災後72時間以内の応急対応や復旧時におすすめの耐風対策も紹介していますまずはお気軽にご相談ください
屋根・外壁のプロが無料でお答えします。
お見積り、リフォームの疑問など、どんなことでもOK!


